栃木県林業センター情報  (No2)

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   特用林産関係試験・研究課題についての情報No2を届けします。

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 『アラゲキクラゲ』 〜その特徴と栽培試験について〜
 ★ はじめに

 梅雨が明け、しのぎがたい猛暑が続く毎日です。こうした日が続くと、冷やし中華などのさっぱりしたものに手を伸ばしたくなります。今回は、林業センターで研究に取り組んでいるきのこの内、そのような料理に合うものの話です。
 当センターでは「自然活用型特用林産物の生産技術の研究」という研究課題に取り組んでいます。これは、家族経営型の栽培に適する特用林産栽培品目を複合的に組み合わせ、長期に渡って安定的にきのこや山菜を収穫することを目的としています。このうち、夏場に収穫する特用林産物の一つとして、「アラゲキクラゲ」に取り組んでいます。それが、最近になって、ようやくきのこが出始めました。そこで、今回はこのアラゲキクラゲを紹介します。


 1 アラゲキクラゲとは

 アラゲキクラゲ(Auricularia polytricha(Mont.)Sacc.)は春〜秋に広葉樹の枯れ木や枯れ枝に発生するきのこです。
 アラゲキクラゲはキクラゲの名前で売られていることも多いようですが、アラゲキクラゲとキクラゲは、同じキクラゲ科に属するものの、別の種です。
キクラゲ科のきのこは英語で
 「jelly fungi(ゼリー菌類)」 

写真1
とよばれることからも分かるように、ゼラチン質であるのが特徴ですが、アラゲキクラゲはキクラゲよりも硬いゼラチン質で、コリコリとした歯ごたえが持ち味です。
 キクラゲは形が「耳」に似ているということで、中国では「木耳」と呼ばれるのに対し、アラゲキクラゲは「毛木耳」と呼ばれています。それは、きのこの背面(写真1右)が暗褐色の密毛に覆われていることからそのような名前がついたのでしょうが、日本においても兵庫県あたりでは「ネコノミミ」という方言名があるようです。
 アラゲキクラゲは、その歯ごたえを生かして、酢の物、炒め物から中華風の煮物等、幅広く使えます。また、ぬか漬けやみそ漬けにしても変わった風味が楽しめるようです。写真2は、中華風の酢の物ですが、さっと茹でて細く切ったものに醤油・酢・砂糖・ごま油等と和え、きゅうりを加えたものです。写真3は卵と肉と一緒に炒めたものです。

写真2 写真3

 2 林業センターにおけるアラゲキクラゲの栽培試験

 当センターでは、培養した菌床を林床等に伏せ込み、きのこを発生させる方法により栽培試験を行い、収量性、栽培適期を把握し、栽培上の問題点を分析しています。
 試験に用いる菌床は、菌床の製造、殺菌、種菌の接種、菌床の培養という工程により行います。菌床の製造に用いるおが粉はコナラおが粉を用い、栄養体として米ぬかを用いました。おが粉と米ぬかを乾燥重量比10:3で配合し、30分程度攪拌した後、水を加え63%程度に含水率を調整します。含水率を調整した後、10分程度攪拌したものを栽培袋に詰めました。本試験では、1kgの菌床を製造しました。これを120℃、60分で高圧殺菌を行い、一晩、放冷室に置いて常温にしたものに、アラゲキクラゲの種菌を接種します。培養は温度22℃、湿度75%で培養を行いました。約40〜50日で菌糸が菌床全体に蔓延しました。
 菌糸が蔓延した菌床を林床に伏せ込みました(写真4)。伏せ込む際には、菌床に10か所程度、カッターナイフ等で十字に切れ目を入れて林床に並べました。散水の際の土のはね返りを防ぐために林床にはわらなどを敷いておき、さらに、保湿を図るために、菌床の上面にもわらを載せ、不織布をトンネル状に掛けておきました。
写真4
 菌床の伏せ込みから約3週間後、きのこが発生し始めました。写真5及び写真6は7月下旬の発生状況で、十字の切れ目を入れた部分からきのこが発生しています。

写真5 写真6

 3 ほかの自然栽培きのことの比較

 きのこの発生が始まった現段階ではまだ判断できませんが、アラゲキクラゲは系統によっては発生しづらいものも多いように感じています。このことは、昨年の冬に同じ場所で発生させたエノキタケが各系統ともおおむね発生に至ったこととは対照的です。そこで今後は発生しやすい系統を選び出すとともに、きのこの生育管理方法の改良も検討する必要があるのではないかと考えております。


 4 自然栽培における問題点

 菌床伏せ込み後、1週間程度経過後に菌床の食害がみられました。そこで、加害虫の特定をするため、粘着シートを設置しました。しかしながら、その後の食害はなく、害虫は特定できておりません。菌床の食害後さらに1週間経過すると、トリコデルマ属菌と思われる雑菌が繁殖したことから、害虫が雑菌を媒介したものと考えられます。なお、食害がみられた菌床は、試験に供した複数系統のアラゲキクラゲのうちの一部の系統の菌床であり、系統による嗜好性がある可能性も考えられました。
 このように、夏場には様々な生き物が活動しているため、冬場に野外で発生できるエノキタケ等に比べて害虫被害の低減という観点を重視しなければならないことが分かりました。

写真7
                 林業センター 研究部


[参考文献]

今関六也・本郷次雄:原色日本新菌類図鑑(U),2322331988
今関六也・大谷吉雄・本郷次雄:山渓カラー名鑑 日本のきのこ,5331988
松川仁:キノコ方言原寸原色図譜,東京新聞出版局,1241980
劉波:中国の薬用菌類−効能と応用法−,自然社,43441982
椿啓介:週刊朝日百科 植物の世界 別冊「キノコの世界」,朝日新聞社,1051997


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