栃木県林業センター情報  (No3)

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   特用林産関係試験・研究課題についての情報No3を届けします。


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 『しいたけを食害するダニ』 〜その予防法と対策について〜


 シイタケを始めとするきのこ類は、人間にとって美味しい食材ですが、他の生き物にとってもとても貴重な食料となります。自然界では、食料を見つけるのはなかなか困難ですから、栽培施設は彼らにとって絶好のエサ場となります。そのため、今まで害虫とは考えられていなかった生物が、新たに害虫となるケースもあります。

 今まで別のきのこを食害することは知られていたが、最近になってシイタケを食害することが知られるようになるとか、或いは、菌床を食べることが目的であったものが、そのうち子実体にも被害が出るようになるとか、そういったケースが少なからずあります。

 特に、林内等の自然環境下で栽培される場合は天敵等による密度調整機能が働きやすいのですが、施設栽培だとそういった機能も働きづらいので、新たな被害が生まれるケースも多いと思われます。彼らも生き残るために、様々な能力を進化させているのでしょう。

 今回は、そういった事例の中で、栃木県で実際に起こった例を紹介したいと思います。

 事例を知ることにより、予防策を施すことで、被害を起こさない、起きても被害を最小限に抑えることができるのではないかと思います。

 平成20年4月8日に、県東環境森林事務所の普及担当から食害されたシイタケの持ち込みがありました。
 食害の受け方を見ると今まで見てきたナガマドきのこバエ、ムラサキアツバやナメクジの食痕とは違っているようでした。

 そこで食痕を
20倍のルーペで確認すると、小さな虫かダニのようなものがたくさんいるのが確認でき、実体顕微鏡で撮影したものが、下の写真になります。
 確かにダニと覚しきものが孔を出たり入ったり繰り返しているようでした。
 栃木県立博物館の古野自然課長に同定をお願いしたところ、ケナガコナダニ{Tyrophagus putrescentiae(無気門亜目コナダニ科)}とのことでした。

 これとよく似た種にオンシツケナガコナダニが図鑑に載っており、シイタケも奇主植物として記述されていますが(1)、ケナガコナダニはビニールハウスやガラス室栽培のキュウリなどの葉を食害する事例が多い(2)ということで、特にシイタケを食害するという報告は今までなかったようです。
 自然界でのケナガコナダニが、シイタケを食害するのかしないのか不明ですが、被害例を調べた限りでは、山口県の菌床シイタケ生産現場で報告例がある位で、かなり珍しいものだと思われます。


 しかし、今後被害が増えていく可能性も全く無いとは言えないでしょう。

 これとは別の種で、
Histiogaster 属(仮称属オバネダニ)のダニ(種名はついていない)による激害(子実体の4割以上が被害)が、山口県を始め全国で2例あるそうです。シイタケ以外でも、ヒナダニ科の仲間で、シイタケ、ブナシメジ、ハタケシメジ、エリンギ、エノキタケといった菌床や子実体が被害を受けている例もあります。
 また、直接被害を受けなくても、害菌の伝播といった悪影響もあります。そういった点からも、今後はダニによる被害にも気を付けていかなければいけないと思います。


 まず、予防策としては、ダニは移動手段を持っていないという点に着目すればいいのではないかと思います。ケナガコナダニは、普通に家屋周辺の土表面からも採取されるそうです。
 ですから、きのこの培養室や発生室等に入る前には、必ず手洗い等を実施することが必要です。


 また、県立博物館中村主任研究員(3)らによると、ダニ類はきのこを利用している昆虫にしがみつき、移動する(便乗)そうです。
 その相手(便乗寄主)にはヒメガガンボ類も含まれているそうです。
 このため、なるべく室内には昆虫類を入れないように、出入り口にはネットのようなもので、ふさぐ工夫が必要でしょう。また、栽培棚にダニが上れないように粘着性のスプレー(金竜スプレー)を吹き付けるのも効果的でしょう。


 もし、万が一被害が発生してしまったら、まずやらなければいけないのは、汚染菌床をできるだけ早く取り除き、棚等も含めて熱湯消毒することです。
 被害を最小限に留めるためには、絶対に必要です。


 しかし、拡大してしまった場合、ダニの繁殖力等を考えるときのこを生産しながら被害を止めることは難しいですが、茨城県林業技術センター(4)によると下記の方法で被害を根絶したそうです。

  @被害発生ハウス内の全菌床を廃棄し、床や棚を洗浄する
  (ダニの繁殖源を絶つ)。

  A燻蒸・消毒する
  (バルサン
SP ジェット50「オキサジアゾール系、ピレスロイド系
   殺虫剤の混合剤」)。

   B室内を25℃で1週間管理した後、再度燻蒸する
  (新たに幼虫を孵化させ、殺す)。

  C数日間、室内を35℃で加温し、室内を乾燥させ、残存虫を殺す
  (ダニは、高温・乾燥に弱い)。


 以上のように、被害が拡大してしまうと、菌床が無駄になってしまうばかりか、何より大変な手間と時間が必要になってしまいます。
 ですから、被害が起こらないように、予防が最も重要でしょう。
 ダニ予防に限らす、日頃から、出入り、室内清掃、雑菌のチェックをこまめに行うことが、きのこの生産にはとても大切です。



[参考文献]


(1)江原昭三(1993)日本原色植物ダニ図鑑:154156
(2)江原昭三(1980)日本ダニ類図鑑:383
(3)末吉昌宏・岡部貴美子・中村剛之(2008)きのこを利用する
   ガガンボ、ガガンボを利用するダニ.九州の森と林業
No83:1-3
(4)倉持眞澄美・小倉健夫(2005)きのこ栽培における珍しい病害
   虫の発生事例.茨城県病害虫研究会会報
4442 46


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